『教養としての投資』を読んで考えたこと|株を買う前に「参入障壁」を見ているか?

奥野一成さんの『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』を読みました。

この本で特に印象に残ったのが、「参入障壁」のある強い企業を見つけて、長く持つという考え方です。

言われてみれば、とても真っ当な話なのですが、自分の投資に当てはめてみると意外と耳が痛いところもありました。

「いい企業をたくさん持つより、本当に強い企業に資金を集めたほうがいいのではないか」「優待を目的の一つにしている自分の投資はどうなんだろう」。

そんなことを考えながら読んでいると、単なる長期投資の本というより、自分が企業の何を見て株を買っているのかを振り返る本になってきます。

この記事では、本書の中心にある「参入障壁」について考えながら、優待投資や銘柄数、企業分析について、私自身が感じたことをまとめます。

目次

一番印象に残ったのは「参入障壁」

本書の投資スタイルを私なりにかなりシンプルにまとめると、強い参入障壁を持ち、長期的に利益を生み続けられる企業を見つけて長く保有するというものです。

奥野氏は強い企業を見るうえで、高い付加価値、圧倒的な競争優位性、長期的な潮流などを重視しています。その競争優位性を守るものが「参入障壁」、いわゆる企業の「堀」です。

たとえば市場そのものが成長していたとしても、誰でも簡単に参入できる事業なら、儲かると分かった途端に競争相手が増えてしまいます。市場が大きくなったからといって、そこで事業をしているすべての会社が利益を増やし続けられるわけではありません。

奥野氏自身も、企業を見るうえで参入障壁を非常に重視しています。顧客が簡単には他社へ移れない仕組みや、競合が真似しづらい技術、規模の優位性などが、その例として挙げられています。

参考:ダイヤモンド・オンライン「企業にとって最も大切なのは参入障壁」

ここを読んで改めて感じたのは、「成長する市場」と「その中で儲け続けられる企業」は別物だということです。

テーマが魅力的だから買うのではなく、その企業が利益を取り続けられる理由まで考えないといけないのでしょう。

「ベターな企業」をたくさん持つより「最強の企業」に集中する?

本書を読みながら、少し自分の投資について考えました。

奥野氏の考え方を突き詰めていくと、そこそこ良い企業を何社も持つより、本当に強い企業を厳選して、そこに資金を集めるという方向に近づくように思います。

理屈ではよく分かります。10社の「まあまあ良い会社」に同じ金額を投じるより、その中に圧倒的な参入障壁を持つ企業があるなら、そこへ多めに資金を振り向けたほうが合理的でしょう。

ただ、私はいろいろな企業を調べて、少しずつ株を持つこと自体も好きです。知らなかった業界を知ったり、「こんな会社が、こんなところで利益を出しているのか」と気づいたりするのも個別株投資の楽しさだと思っています。

だから、本書を読んだからといって「今後は数社だけに集中投資しよう」とはなりませんでした。むしろ取り入れたいのは、銘柄数そのものより、資金の濃淡をもっと意識することです。

いろいろな企業を少額で持って学ぶ楽しさは残しつつ、本当に強いと思える企業には資金を厚くする。そのほうが、私の投資スタイルには合っている気がします。

優待目的の証券口座もあるので、正直ギクッとした

本書では、「この会社を応援したい」「商品が好き」「株主優待が欲しい」といった理由だけで株を買うことに対して、かなり厳しい言葉が出てきます。

ここは、正直ちょっとギクッとしました(笑)。

というのも、私は株主優待を楽しむための証券口座も使っているからです。ただし、優待だけを見て何も考えずに買っているつもりはなく、業績や財務、事業内容なども確認してから買っています。

……とはいえ、本書を読んでいると「その分析、本当に十分なの?」と聞かれているような気もしてきます。

優待が欲しいこと自体は、私は悪いとは思いません。企業を応援したいという気持ちも同じです。

ただ、「その会社の株を持ちたい理由」と「その会社が長期的に利益を生み続けられる理由」は分けて考えたほうがいいのでしょう。

優待が魅力的でも、事業そのものが弱ければ優待を続けられなくなるかもしれません。「優待が欲しい」で終わるのではなく、その会社にはどんな堀があるのか、競合に簡単に真似されない理由は何なのか。そこまで考える必要がありそうです。

そう考えると、自分の企業分析はまだ少し甘いのかもしれません。もう少し企業を見る力をつけたうえで、銘柄数を少し整理したり、少なくとも大きな資金を入れる企業については今より厳しく選んだほうがいい。本書を読んで、そんなことを考えました。

「参入障壁を見ろ」は簡単。でも、見つけるのは難しい

問題はここです。その参入障壁を、どうやって見つけるのか。

「業界シェアが高いから強い企業」と単純には言えません。そのシェアを維持できる理由がなければ、数年後には競争環境が変わっている可能性があります。

技術力も同じです。今は優れていても、競合が追いつくかもしれない。ブランドも永遠ではなく、消費者の好みが変われば価値が落ちることがあります。

奥野氏も、参入障壁は一度作れば終わりではなく、それを高くし続けられる企業文化そのものが重要だと述べています。

参考:ダイヤモンド・オンライン「参入障壁を高くし続けられる企業とは」

結局、「参入障壁のある企業を買えばいい」という言葉だけなら簡単です。

本当に難しいのは、その堀がなぜ存在していて、これからも残るのかを自分なりに説明できるところまで企業を理解することなのでしょう。

山口揚平氏の「9つの観点」とつながった

ここで思い出したのが、山口揚平氏の『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座』です。

この本では、企業を見る観点として9つの視点が挙げられています。

  1. 社会動向
  2. マクロ経済
  3. 資本市場
  4. 市場構造
  5. 収益構造PL
  6. 資本価値BS
  7. 競争構造
  8. 事業構造
  9. 資本政策

以前読んだときにも、「全部見るのは大変だな」と感じました。

でも、『教養としての投資』を読んだあとでは、この9つを見る意味が以前より分かる気がします。

「この企業には参入障壁があります」と言うだけなら簡単です。

でも、本当にそうなのかを判断するには、その会社がいる市場、競合、顧客、収益構造、財務、資本政策まで見なければいけません。さらに、「なぜ顧客はこの会社を選ぶのか」「値上げしても離れないのか」「5年後も同じ強みが残るのか」と考え始めると、業界そのものへの理解も必要になります。

つまり、奥野氏のいう「参入障壁を見る」ことを実践しようとすると、結局は企業を多面的に見る力が必要になるわけです。

山口氏の9つの観点が、ここでつながりました。

結局、企業分析は「急がば回れ」なのかもしれない

ここまで考えると、少し身も蓋もない結論になります。

結局、地味に勉強を続けるしかない。

PLやBSを読む。業界を調べる。競合と比較する。ビジネスモデルを理解する。実際に株を持って決算を追い、ときには自分の予想が外れる。

そんなことを繰り返しながら、「この会社は本当に強いのか」を見る目を少しずつ養っていくのでしょう。

個別株投資をしていると、どうしても早く結果が欲しくなります。「次に上がる株を知りたい」と思うこともありますし、できることなら楽に儲けたい。

でも、本当に強い企業を見つけようと思えば、近道はあまりないのかもしれません。むしろ、企業や業界について地味に勉強し続けることが、結果的には一番の近道になる。

急がば回れ。

『教養としての投資』を読んで、一番現実的に残ったのはそんな感覚でした。

「教養としての投資」だけど、かなり株式投資の本

タイトルについても、少し思うところがありました。

『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』というタイトルですが、実際に読んだ印象では、内容の中心はかなり株式投資です。

投資といえば、不動産、債券、金などさまざまな対象があります。その意味では、私自身は『教養としての株式投資』と言われたほうが、中身を想像しやすかったと思います。

もっとも、本書が扱っているのは「どの株を買えば儲かるか」というテクニックではありません。企業をどう見るか、投資とは何なのか、長期で企業と付き合うとはどういうことなのか。そこまで含めて考える本なので、「教養としての投資」というタイトルにも納得できる部分はあります。

これから読む人には、さまざまな資産運用を横断的に扱う本というより、長期の株式投資を軸に投資について考える本だと思っておくと、イメージとのズレは少ないでしょう。

まとめ|株を買う前に「この会社の堀は何か」を考えたい

『教養としての投資』を読んで一番残ったのは、やはり「参入障壁」でした。

いい商品を作っている。経営者が好き。株主優待が魅力的。成長している業界にいる。

どれも企業を見る材料にはなりますが、それだけでは、その企業が長期的に利益を生み続けられるかまでは分かりません。

利益を競合から守るための「堀」があるのか。その堀をこれからも深くしていける企業なのか。個別株を買うなら、そこをもう少し意識したいと思います。

一方で、私は「最強の企業だけを数社持てばいい」とまでは考えていません。いろいろな企業を知り、少額で保有しながら学ぶことも、私にとっては株式投資の楽しさだからです。

だから今後も、銘柄数を無理に減らすというより、持つ企業については参入障壁をこれまで以上に考え、本当に強いと思える企業には資金を厚くする。そんな形で本書の考え方を取り入れてみたいと思います。

そして、その判断力をつけるには、結局は企業分析を続けるしかありません。

PLやBSを読み、業界や競争環境を調べ、ビジネスモデルを理解する。派手ではありませんが、個別株投資もやはり「急がば回れ」なのでしょう。

『教養としての投資』は、「何を買えば儲かるか」ではなく、自分は企業の何を見て株を買っているのかを考え直させてくれた一冊でした。

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