KHネオケムと日本リーテックは買い増し、日本曹達と日本高純度化学は新規で1株から。今の私の感触は、まだこのあたりにあります。
ただ、配当を受け取りながら何を待つのかを考えると、「次の決算が良さそう」だけでは少し物足りない。製品が新しい用途に採用される、増産設備が利益を生む、眠っていた資産を成長投資や還元に回す。会社が変わるきっかけは、決算日の先にもありそうです。
今回は、その変化を9の視点から考えてみます。ここでいうカタリストは、利益やキャッシュフロー(CF)、資本効率が変わり、会社への評価が変わるきっかけ。会社が公表した計画と、私が期待している変化は分けて書きます。
第1回:4社を選んだ理由とAIとの接点
この記事は2026年10月7日時点の検討記録です。NCのBSは6月末、比率の分母となる時価総額は10月6日東証終値時点にそろえています。
企業分析の9つの視点は、山口揚平氏の本から抜粋
使うのは、山口揚平氏の『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座』(日本実業出版社)に出てくる「企業を分析する9の視点」です。
- 社会動向
- マクロ経済
- 資本市場
- 市場構造(業界)
- 収益構造(PL)
- 資本価値(BS)
- 競争構造
- 事業構造
- 資本政策
という視点名を抜粋しています。[17]
次の章からは、各社を分析したい結果を書いています。カタリストの仮説、図は、今回の公表資料をもとに私が整理したものです。図は1枚につき1視点。気になるところから、ゆっくり見ていける形にしました。
1 社会動向|需要の追い風が、どこへ届くか

AI投資が増えると、4社には違う形で需要が届きます。KHは半導体製造の高純度溶剤、日本曹達はAIサーバーの基板材料やHBM製造用材料、日本高純度化学は接続部分のめっき薬品。日本リーテックは、DCに必要な電気設備の工事です。[1][3][4][6][8]
私が待ちたい変化は、この需要が実際の数量、受注、利益へ届くこと。KHと高純度化学では用途別の販売や利益、日本曹達ではPB・VPの販売と設備稼働、日本リーテックでは受注済み工事の施工を見ます。需要が伸びる背景には惹かれますが、顧客の投資計画や工期もあるため、4社が同時に増益するとは限りません。
時期の見方:まず2026年下期から2028年にかけて追う、という私の観察期間です。会社がAI関連利益の実現期限を約束しているわけではありません。
2 マクロ経済|売上が増えても、利益が増えるとは限らない

KHでは原料価格と製品価格の差、日本リーテックでは人件費・資材費と受注価格、日本曹達では為替や農薬の需要・在庫、日本高純度化学では金・パラジウム価格が気になります。[2][3][4][8]
この視点のカタリストは、市況の改善や、値上がりした原価を販売価格へ反映できることです。ただ、KHの基礎化学品の増益を電子材料の成長とまとめたり、高純度化学の貴金属価格による売上増を数量増と受け取ったりすると、期待が膨らみすぎそうです。製品の数量、価格、利益率を分けて確認します。
時期の見方:市況の転換時期は決められません。四半期ごとの価格・原価・粗利益の変化で確かめます。人件費上昇が施工価格へ反映できない場合など、追い風が利益に届かない条件も見ておきたいです。
3 資本市場|会社を見る目が変わるとしたら

KHは、電子材料や機能性材料の利益が安定して伸びれば、市況で動く化学会社という見方が変わるかもしれない。日本曹達は、増産した設備が利益と現金を生めば、投資回収への見方が変わりそうです。これは私の仮説で、評価倍率が上がると決まっているわけではありません。
日本リーテックはもう少し数字で追えます。会社の説明ではROE8.3%に対して推計資本コストは8.6%。修正後の中計目標は、2028年3月期にROE9.0%です。収益性と資産の使い方を改善し、資本コストを上回る姿を示せれば、PBRへの評価が変わる条件になると考えています。ただし資本コストの推計値自体も変わります。[10][15]
日本高純度化学は、売却益を含むPERの低さに加え、本業の利益と資産の使い道を説明できることが大切だと感じます。[8][20]
時期の見方:会社の改善目標と、株価が評価し直される日は別です。リーテックの2028年3月期は経営目標の期限であり、株価上昇の期限ではありません。
4 市場構造(業界)|新しい用途への採用が広がるか

KHは、高い純度と品質を求める半導体の用途で採用を広げること。日本高純度化学は、顧客の製造工程に合うめっき薬品を提案し、先端パッケージなどの販売につなげること。どちらも、技術が選ばれてから継続した販売になるまで追いたいです。[18][20]
日本曹達の中計には、PBの難燃性・耐熱性を高めたグレードの事業化や、基板の主樹脂への採用を狙う方針があります。今の販売増だけでなく、材料を使ってもらえる範囲が広がるなら、次の成長のきっかけになります。[6]
日本リーテックでは、資格を持つ人材と施工体制が必要です。案件があっても、施工できる人員と採算が伴わなければ伸ばしにくい。育成、協力会社との連携、施工効率の改善が、受注と売上を増やせる条件だと見ています。[19]
時期の見方:KHは2025~2027年の中計、日本曹達は2026~2029年度のStage3で方向性を確認します。個別顧客の採用日や、その後の利益計上日は非開示です。
5 収益構造(PL)|売上の先に、何が残るか

ここは、買い増ししたくなるかに直結する視点です。KHは電子材料の数量と利益率が伸びるか。日本リーテックは受注を消化し、原価を引いた後に利益が残るか。日本曹達は増産した製品の販売が、償却費などの負担を上回るか。日本高純度化学は数量と製品構成の改善が、研究開発・人員などの費用を吸収するか。[2][3][4][8]
KHの上期電子材料利益は51.3%増でしたが、日本曹達の1Qケミカル部門は3.3%増。日本高純度化学の会社提示の調整後営業利益は0.88億円で、前年0.92億円には届いていません。同じAI関連でも、利益への届き方は違います。[2][4][8]
時期の見方:2026年下期から2028年にかけて、複数期の利益率と営業CFを追う私の観察期間です。設備が完成した日や工事を受注した日から、利益が一気に増えるとは置きません。
6 資本価値(BS)|持っている資産を、どう働かせるか

現金NCは、KHが−73.1億円、日本リーテックが+88.8億円、日本曹達が−320.8億円、日本高純度化学が+66.2億円。保有証券を70%評価で加えると、順に+4.0億円、+228.5億円、+313.4億円、+191.9億円になります。いずれも、6月末BSと同じ定義から私が計算した数値です。[2][3][11][12]
KHと日本曹達は、投資した設備が現金を生み、借入や配当との釣り合いが改善するか。日本リーテックは工事代金の回収に加え、政策保有株や遊休資産の活用。日本高純度化学は保有株を売った後の資金配分が、変化の候補になります。[10][18][20]
株式を売れば資産が現金へ変わりますが、それだけで価値が新しく増えるわけではありません。再投資の収益や還元まで見たいです。証券70%加算は実際の換金手取りではなく、日本曹達には持分法投資等も含みます。現金にも事業を続けるために必要な部分があります。
時期の見方:リーテックの資産活用計画と高純度化学の政策保有株縮減は、2028年3月期までの中計で追います。KHと曹達は、設備の稼働・営業CF・借入の動きを毎期確認します。
7 競争構造|強みが利益に表れているか

KHの高純度化・品質・安定供給、日本曹達の独自の重合技術、日本高純度化学の薬品調合・省貴金属・顧客支援。化学会社同士でも、強みがある場所は違います。日本リーテックでは、安全、施工技術、人材の育成が重要です。[1][6][11][18][19][20]
カタリストとして考えるなら、強みが新しい製品の採用、販売単価、利益率、施工できる仕事の量へ表れること。KHの品質価値を価格に反映した説明は、その手がかりです。[2] 「良い技術がある」で止めず、会社にどのくらい利益が残るかへつなげて見たいです。
時期の見方:4社とも新規採用や競争力の改善に、共通の公表期限はありません。中計期間中の採用・製品構成・利益率・生産性を追います。
8 事業構造|成長投資で、稼ぎ方がどう変わるか

KHは、機能性材料と電子材料への比重を高める方向です。第5次中計は2025~2027年。電子材料のEBITDA目標111億円は、その3年間の累計で、2027年単年の利益目標ではありません。高付加価値分野が会社全体の利益を安定させるかに関心があります。[18]
日本リーテックは鉄道などの基盤を持ちつつ、DC等の工事を広げること。人材、DX、連携等に投資し、施工できる量と採算を高める姿を追います。[19]
日本曹達には、PB・VPのAI用途と、医薬品添加剤HPCの増産があります。Stage3では2029年度の高付加価値事業売上を2025年度比50%増とする目標を掲げています。2028年竣工予定のTADF量産設備もありますが、こちらはOLED向け発光材料で、AI・DCの直接の材料とは分けて見ています。[6]
日本高純度化学は新規事業・M&Aを計画していますが、予算があることと、良い投資が実現したことは違います。具体的な案件、取得条件、その後の収益を確認したいです。[20]
時期の見方:KHは2027年まで、リーテックと高純度化学は2028年3月期まで、曹達は2029年度まで。それぞれ会社が示す計画期間で、個別投資の成功や利益貢献を保証する期限ではありません。
9 資本政策|資産と利益を、投資・還元へつなぐ

KHはDOE5%以上が目標、日本リーテックはDOE3.6%水準、日本高純度化学はDOE5%が下限。日本曹達は累進配当を基本とし、総還元性向50%以上を掲げています。「目標」「水準」「下限」は、分けて受け取りたいです。[6][9][10][20]
リーテックの修正後の資金配分計画では、3年間で政策保有株・遊休資産から20億円以上を捻出し、成長投資や還元へ回す方針です。[10] 高純度化学は2028年3月期までの中計で、政策保有株式の純資産に対する比率を20%未満へ縮める目標を掲げています。売却後の資金を、投資と還元へどう使うかが焦点です。[20]
私が待ちたいのは、方針が実際の資金配分へ進むこと。KHと曹達では営業CFが投資・配当を支えられるか、リーテックと高純度化学では資産活用後の投資成果と還元を確認します。まだ公表されていない増配や自社株買いは、確定したイベントとして扱いません。
時期の見方:毎期の配当・CF・資金配分を確認しながら、各社の中計期間で追います。資産売却が進んでも、使途次第では手元現金は減ります。
決算の先まで見ると待つものが違う

| 会社 | 中期の変化の候補 | 利益・価値へつながる条件 | 会社が示す時期 |
| KHネオケム | 高純度品の採用拡大、高付加価値化 | 数量・利益率の伸びが継続し、全社利益・CFへ届く | 第5次中計:2025~2027年 |
| 日本リーテック | 施工力・資本効率改善、保有株・遊休資産活用 | 採算の良い工事を消化し、回収・ROE改善へつなぐ | 中計:2028年3月期まで。営業利益77.5億円・ROE9.0%目標 |
| 日本曹達 | PB新グレード、VP・HPCの増産投資回収 | 顧客採用・販売増・稼働率が償却費等を吸収する | Stage3:2026~2029年度。個別の採用日・利益寄与日は非開示 |
| 日本高純度化学 | 本業の付加価値化、政策保有株の縮減と資金配分 | 本業利益が伸び、売却資金が収益性のある投資・還元へ進む | 中計:2028年3月期まで。政策保有株比率20%未満が目標 |
表の条件は私の分析です。計画期間は会社資料に基づきますが、会社への評価がいつ変わるかまでは分かりません。[6][10][15][18][20]
次の決算は、KHが11月5日、日本リーテックが11月9日、日本曹達が11月12日、日本高純度化学が10月27日の予定です。曹達は公式IR、他3社は10月6日に確認したYahoo掲載予定で、変更されることがあります。日付は2026年です。[13][14] ここでは、中期の仮説が進んでいるかを確かめます。
追加で買いたくなるのはどんな変化だろう
9の視点で見ても、今の感触はKHと日本リーテックへの買い増しに寄っています。KHは電子材料の利益成長が続くこと、リーテックは受注した仕事が採算と回収につながること。この2つが進むなら、追加で持つ理由を強められそうです。
日本曹達は、新しい用途への採用と投資回収を追う1株。日本高純度化学は、資産の厚さに加えて、本業利益と売却資金の使い道を確かめる1株。気になる2社ですが、同じ「AI関連・高配当」として一緒に買い進めるより、それぞれ何を待つのかを書いておきたいです。
まだ1社ずつ新規で持つかも含めて迷っています。会社を知る楽しさと、追加資金を入れたい理由。その両方を残しながら、もう少し考えていこうと思います。
参照資料
2. KHネオケム:2026年12月期中間決算短信(2026年8月4日)
3. 日本リーテック:2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月6日)
4. 日本曹達:2027年3月期第1四半期決算概要(2026年8月7日)
6. 日本曹達:中期経営計画Stage3(2026年5月14日)
8. 日本高純度化学:2027年3月期第1四半期決算説明資料(2026年7月24日)
9. KHネオケム:配当方針変更・配当予想修正(2026年8月4日)
10. 日本リーテック:資本コストや株価を意識した経営への対応(2026年5月18日)
11. 日本高純度化学:事業モデル・強み/中期経営計画/2027年3月期第1四半期決算短信
12. 日本曹達:2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月7日)
13. Yahoo!ファイナンス:KHネオケム/日本リーテック/日本曹達/日本高純度化学
14. 日本曹達:公式IRカレンダー
15. 日本リーテック:中期経営計画の経営数値目標修正(2026年5月12日)/中期経営計画の公式説明
17. 山口揚平『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座――会社の本質を見抜く9のポイント』日本実業出版社、2008年。ISBN 9784534044495。書誌情報
18. KHネオケム:第5次中期経営計画(2025~2027年)/公式中計ページ
19. 日本リーテック:中期経営計画2025~2027年度・全文(数値目標・資金配分・配当方針は2026年5月の修正資料[10][15]を優先)
20. 日本高純度化学:中期経営計画FY2025~2027・全文(最終年度は2028年3月期)

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